第6次財政問題検討委員会答申について -退教互財政課題への対応-

⑴ 厳しさを増す退教互財政

要因① 少子化による現職組合員減少により退教互財政の縮小が進む

少子化により長野県の教職員数が減少し、退教互組合員も減少していくことが予想されます。これとともに退教互の財政規模も縮小し、現在86億円の総資産が2032年には66億円に減少する予測です。

要因② 世界的な経済不況、日銀の低金利政策等により資産運用益が減少する

退教互は資産運用により収益を得、療養給付等を安定的に支給してきました。しかし、世界的な経済不況、日銀の低金利政策等により、上記グラフのように年間資産運用益は7年前と比較すると2億1,600万円から9,700万円に減少しました。

⑵ 組合員の皆さんにご協力をいただきながら実施してきた収支改善

【支出削減 総額1,600万円(年額)】
〇特別給付の廃止(年額400万円)
〇退教互だよりの発行回数を2回に変更(年額170万円)
〇被扶養者新規認定の中止(年額20万円)
〇人件費の削減(2015年度から約1,000万円の人件費削減)
【収入増  総額70万円(年額)】
〇広告・手数料収入等による収益増

◇上記の収支改善努力を重ねてきましたが、更に次のような新たな財政課題が出現しました。

⑶ 新たな二つの財政課題

① 「後期高齢者窓口2割負担」による年間7千数百万円の療養給付額の増加

 2022(R4)年10月から実施された「後期高齢者窓口2割負担」により、新たに7千数百万円の支出増が見込まれることになりました。(全員が2割負担となるとして試算)
 これは療養給付額の3カ月分に当たるという莫大な金額です。

(単位 円)
 2019年度実績2割負担試算増加見込額
外来61,426,503123,610,86662,184,363
入院65,332,10079,387,90914,055,809
給付増加見込み額合計  76,240,172(療養給付3カ月分に相当)

*2020年度以降はコロナウイルス感染症による影響があるため、2019年度実績で試算しました。

② 「定年延長」により療養給付のための資産(給付準備資産)が10億円以上減少

 2023(R5)年度から実施される定年延長により、定年延長完了までの10年間に、療養給付のための給付準備資産が10億円以上減少するという試算をしています。

 ➡ なぜ定年延長により退教互の給付準備資産が減少してしまうのか?

 このような疑問が生じることと思います。実は、退教互の資産は次のようになっています。

ア責任準備資産 約54億円
イ給付準備資産 約31億円
ウその他の資産 約 1 億円

   総資産  約86億円

ア 責任準備資産54億円とは?

これは現職組合員の掛金積立金の総額で、現職組合員が退職する時まで預かっているお金です。現職組合員が退教互を脱退するという選択をした時には、全額返金する義務があります。よって、これを退職者の療養給付、現職組合員の貸付等に使用することはできません。

イ 給付準備資産31億円とは?

 退職時に「退教互の退職組合員になり、退職後に療養給付を受け取る」という判断をした場合、
現職時に積み立てきた掛金を退教互に納めていただきます。これが給付準備資産で、ここから、
療養給付、貸付、事務局運営費が支出されます。定年延長によりこの給付準備資産が減少してし
まうのです。

ウ 定年延長による給付準備資産減少のしくみ

現職より預かっている掛金資産
【脱退時には全額返金義務】

   療養給付、貸付等の資産
   【毎年3億円療養給付送金】

  1. 通常は定年退職者のほとんどの方が、退職後の療養給付を受けるために退教互に掛金を収めて、退職組合員資格を取得します。これにより、現職時に積み立てていた掛金がサイフAの責任準備資産から、サイフBの給付準備資産に移ります。(上図青矢印部分)
  2. サイフBから、療養給付(年間約3億円)が支払われます。
  3. 定年延長により定年退職者がいない年が5回ありますが、この年はサイフAからサイフBに3億円が入りません。
  4. しかし退職者への療養給付3億円は例年通り行われるため、サイフBの資産は減少します。
  5. その結果、給付準備資産は2032(R14)年までに10億円以上減少すると試算しています。

👉以上のような財政状況から、今後も療養給付を安定的に継続していくためには、退教互事業の中心であり、毎年3億円を支出している「療養給付」の給付基準を変更せざるをえないと判断するに至り、2022(R4)年7月に第6次財政問題検討委員会に見直しを諮問しました。

👉検討委員会では、3回の協議を経て中間答申をまとめていただき、退教互だより特別号として全組合員に送付し、総数で45通の意見・要望を寄せていただきました。

👉これを受け、組合員の皆様からの意見・要望に可能な限り応える内容にするため、検討委員会では最終答申にむけて更に熟議を重ねていただきました。

👉2023(R5)年2月に開催された支部代表者会(コロナウイルス感染症の関係で支部長のみ参加)でも協議していただき、3月の第6回検討委員会で最終答申を提出していただきました。

👉4・5月に各支部で実施された支部総会では、事務局から参加者の皆様に最終答申の説明をし、ご意見・要望をお聞きしました。

👉これを受け、6月に開催された第6回理事会において、最終答申に基づく規程の改正が承認され、2024(R6)年4月受診分から療養給付基準等を変更することが決定されました。

2 検討委員会の最終答申

第6次財政問題検討委員会の報告

 第6次財政問題検討委員会は6回にわたって開催され、財政問題と給付事業等の見直しについて検討を行ってきました。最終となる3月9日開催の第6回検討委員会において、金森輝雄委員長より松本理事長に「最終答申」が提出されました。これを受け、第6回、第7回理事会において、関係規程の改正が承認されましたので、ここにご報告します。

2023(R5)年3月9日

長野県退職教職員互助組合
 理事長 松本 道明 様

第6次財政問題検討委員会
委員長 金森 輝雄

最終答申

 第6次財政問題検討委員会は、理事長の諮問を受け下記事項について検討を行った。3回の協議を経て、10月には結論が出た事項(療養給付の控除額、給付率、給付上限額、給付額の端数処理)について「中間答申」を行い、退教互だよりで組合員にお知らせした。組合員からは、中間答申に対する様々な意見・要望が寄せられ、これらも参考にしつつ更なる検討を重ねてきた。6回にわたる検討委員会の協議を踏まえ、下記のとおり答申する。

1 控除額は2,000円(現行どおり)とする。
2 給付率は5割とする。 
3 給付上限額は 70歳未満-外来 20,000円/月・入院 20,000円/月
        70歳以上-外来   5,000円/月・入院 20,000円/月 とする。
4 給付額端数処理は、100円未満切捨とする。
5 定年延長への対応について
 ⑴  定年延長による掛金総額の変更は行わない。
 ⑵  現職組合員加入最終期限は現行どおり、満30歳に達した年度内、30歳を過ぎて新規採用された場合は採用年度内とする。
 ⑶  退職組合員資格取得に関わる以下の事項は現行どおりとする。
  ① 退職時に退職組合員資格を取得する。
  ② 45歳以上の退職で退職組合員資格取得を可能とする。
  ③ 年齢加算額は定年退職年齢までの年数に2万円を乗じた額とする。
 ⑷ 定年延長後の組合員の権利および義務は、現行どおりとする。
 ⑸ 定年延長による給付準備資産の減少については、制度実施による財政への影響を注視する。
6 実施にあたって
 ⑴ 組合員に周知するため、実施は2024(R6)年4月1日受診分からとする。
 ⑵ 但し、2019(H31)年4月1日から2023(R5)年3月31日に退職し、退職組合員資格を取得した組合員に、少なくとも退職後5年間の現行給付基準適用措置を下記のとおり実施する。

〇その他 
1 将来にわたって退教互財政の健全性を維持するために、共済事業規程に規定された「原則5年ごとの財政検証」を着実に実施すること。
2 今後も引き続き事業内容の見直しや組織改革等、更なる財政改善に努めること。
3 「教職員の互助、助け合いの組織」という退教互設立の精神を組合員と共有し、今後の事業運営を進めていくこと。

3 給付準備資産(療養給付を支出する資産)の見通し

 今回の見直しにより、療養給付額は年間約3億円に抑制できると考えられます。このことにより、退教互事業の中心である療養給付を支出する給付準備資産は、定年延長が完成する2032(R14)年度に20億円を確保することができ、退教互の事業継続が可能となる見込みです。

4 給付額の例

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